目次
- 春のバラ
- 消毒について
- 肥料撒き
- 切り戻し
- 水やり
- おすすめの資材
春のバラ
一年を通して、春はバラの開花を楽しむには最も適したシーズンと言えるでしょう。長い冬の間に蓄えた養分が気温の上昇と共に溢れだし、勢い良く新芽が吹く姿を見ると、これまでの管理が報われ安堵してきます。
生命力を感じる瞬間でもあります。病害虫の被害が比較的少ない最初の開花期(一番花)は特に美しく、様々な個性のあるガーデンを巡りアイデアやインスピレーションを得ることや、自身の理想を目指しガーデン作業に没頭することも良いでしょう。春にしか花を楽しめない品種もあるので植物の世界は本当に奥が深いです。
その一方で春は生育に差が付きやすい時期でもあります。主な要因としてはバラを育てている環境が最も大きく、次に品種の特性や株の年齢によって変わってきます。
非常に良くある質問としては、同じ店舗で買った品種の生育に差が付いてしまったということです。同じ場所、同じタイミングで購入し、さらに同じように管理しているはずなのに、一方は葉が展開しているのにもう一方はまだ芽吹かないなど、FAQです。
どうしてでしょうか。答えは品種による特性ももちろんありますが、一番の要因は植込みをした時期が違うからです。生産者側の冬場の植込みの様子としては、複数のメーカーから一年分の多数の品種を何回にも分けて仕入れをし、それを順次鉢植えしていきます。その結果、最初の入荷から最後の入荷まで数か月かかることになります。
私たち生産者にとっては当たり前のことなのですが、いつ植え込んだ苗を買うかは買う側は選べませんし、その時のベストな状態の苗をお送りするということですが、中々見えづらいとことでもあります。ゆえにシーズンの最初の方に植えたものと終わりの方に植えたものでは生育に数週間程度、差が出てきてしまいます。バラは開花までに必要な光量と時間が決まっています。
大事なことはインターネットやSNSの情報を真に受けて自分のバラ苗と比べないことです。その代わりに目の前のバラたちの様子を観察しましょう。当店も寒冷地にありますが、植物にとって環境という要因が生育にとって何よりも影響を及ぼします。
前置きが長くなってしまいましたが、春のお手入れについても触れていきます。項目としてはありふれたものが多く馴染み深い作業が多いでしょう。
まずは消毒。綺麗な花を見たければ残念ながら避けられません。環境や体質的にどうしてもできないという場合は虫除けハーブスプレーを使用したり、品種選びを工夫するなどは効果がありますが、その分、消毒する場合の何倍も手をかけてやる必要があります。
例えば害虫を見かけたら捕殺し、雨や泥に当たれば葉を拭き、病気になれば広がらないよう葉をむしったり細菌を洗い流したり、雑草を抜いたり・・・と挙げていくとキリがありません。無農薬で育つバラの開発が進んでいますが、ノバラの特性に近くモダンローズの枠では実現しないでしょう。病気に負けない品種は作れても虫はどうしたって寄ってきます。現時点では綺麗なバラを見たければ、時間とコストのバランスを考えると消毒という選択肢がベストでしょう。
消毒について
「消毒」という響きからそこで一つの壁があるように感じますが、やってみれば意外と難しいことではないことが分かるでしょう。薬剤を希釈して吹き付ければそれが消毒です。シーズン中の間隔としては、ベストは2週に一度、できれば月に1回くらいは行いたいところです。
ポイントは混ぜ合わせる事とローテーションすることです。混ぜ合わせるとは、薬剤を複数使うということです。消毒用の薬剤は混ぜて使うことを前提として作られています。基本的な考え方としては、病気を予防するための殺菌剤と害虫を駆除するための殺虫剤を農薬の効き目を高めるために展着剤と共に希釈することです。
春先はまずうどん粉病とアブラムシから駆除し、徐々に黒点病やガの幼虫など大きな虫に効果の高いものを使っていきます。ダニが発生する時期は殺ダニ剤を入れると良いでしょう。液肥も混ぜてみても大丈夫です。農薬の価格や効き目はピンキリですが、経験上、高価なものほど新しく効果が見込めます。今はホームセンター以外にもネット通販でも買えるので、プロが使っているものも手に入ります。
次にローテーションとは農薬を輪番で使用するということです。農薬のパッケージをよく読むと使用回数が書いてあります。回数が2回だとするとその年は2回までの使用にしておかないと抵抗性が付いて効果が薄まるという意味です。例えばダニ剤など特に抵抗力が付きやすいのですが、2週間おきに16週間(計8回)打つとしたら、スターマイト→ペンタック→ダニカット→コロマイトを2周するというイメージです。製品名が違っても成分が同じものもあるので注意が必要な場合もあります。
大きめなガーデンをお持ちであればエンジン式の汲み上げ型を、ほとんどの方は15Lぐらいを背負うタイプが使いやすいでしょう。バラ苗だけでなく一緒に植わっている木々や宿根草などにもかけてあげるのもポイントと言えます。
肥料撒き
消毒をクリアすれば作業の半分は終わりです。肥料撒きは冬場にあげていなければ芽出しに1回、開花後にもう1回です。冬のお手入れで肥料(寒肥)が入っていれば開花後で十分でしょう。
鉢植えには化成肥料ではなく有機肥料が安心です。夏場など気温が上がると塩分濃度も上昇し、pHが変わり弱酸性が保てなくなります。安価なその時だけ効く肥料よりも、長い目で見て土壌にも植物にも良い影響が期待できる良質な肥料を使いましょう。
切り戻し
四季咲き性のバラは開花後の切り戻しも重要です。
ハイブリッドティー(HT)やフロリバンダ(FL)で切り方が違いますが、花首だけカットするとひょろひょろの株の出来上がりなので、足腰のしっかりした見栄えの良い樹形を作るため、下からシュートが出るように切ります。
HTなら半分の長さ、FLなら2/3の長さぐらいです。生育期のつるバラは花だけカットし伸ばしたい長さまで到達させてあげると良いでしょう。
水やり
もう一つこの時期の管理ポイントは水です。ガーデンで根付いているバラ苗であれば基本的には不要ですが、鉢植えの方は管理が難しい時期です。
何日に1回という考えは良くなく乾いたらたっぷりです。その見極めが肝心なのですが、10号ぐらいまでなら手で持ち上げてみる方法がおすすめです。
水分量100%の重さを感覚で覚えると、水分量が減ったときは持つと軽いことが分かります。土の表面が乾いていても内部にしっかりと保水している場合があります。この状態で水を続けると根腐れしてしまうのですが、本格的な暑さが来る前のこの時期は特にやりがちです。
管理に関して、その一部を挙げましたがやるべきことが多いのもこの時期の特徴です。
実はバラを多く育てている人ほどお花をゆっくりと見られていないかもしれません。時にはこの素晴らしい時期にゆっくりとバラを眺めたいものですね。